2026年2月09日




「帯状疱疹」という言葉を聞いて、多くの方が思い浮かべるのは「ピリピリとした痛み」や「赤い水ぶくれ」でしょう。しかし、医療の現場で本当に恐れられているのは、目に見える皮膚の症状ではありません。それは、発疹が消えた後にやってくる「帯状疱疹後神経痛」という、長く苦しい後遺症です。
今回は、帯状疱疹の真の怖さと、重症化を防ぐための最善の対策について解説します。
【特設ページ公開】神経ブロック注射のご案内痛みでお困りの方へ。神経ブロック注射について、効果・対象症状・費用の目安・受診の流れをまとめた特設ページを公開しました。
対象例:首・肩・腰の痛み、坐骨神経痛、帯状疱疹後神経痛、頭痛、手足のしびれ など
夕方〜夜間中心の診療で、お仕事帰りの受診にも対応。詳しくは特設ページをご覧ください。
目次
1. 帯状疱疹は「皮膚」ではなく「神経」の病気
帯状疱疹は、子供の頃にかかった水ぼうそうのウイルスが、神経節に潜伏し続けることで起こります。疲れや加齢で免疫力が低下した際にウイルスが再活性化し、神経を激しく攻撃しながら皮膚へと伝わっていきます。このとき、ウイルスによって神経そのものが「変性」したり「破壊」されたりしてしまうことが、痛みの根本原因です。
2. 「帯状疱疹後神経痛」の凄まじさとリスク
通常、皮膚の症状は2〜4週間で治まります。しかし、神経の損傷がひどい場合、皮膚が完治した後も、刺すような、あるいは焼けるような激痛が数ヶ月から数年以上続くことがあります。これが帯状疱疹後神経痛です。
- ・耐えがたい痛み: 衣服が擦れるだけで激痛が走る「アロディニア」という症状を伴うこともあります。
- ・QOL(生活の質)の低下: 激痛による不眠や食欲不振、さらには抑うつ状態に陥る方も少なくありません。
- ・難治性: 神経そのもののダメージであるため、一般的な鎮痛剤が効きにくく、治療が長期化するのが特徴です。
3. 重症化を食い止める「鉄則」と専門治療
この恐ろしい後遺症を残さないためには、「一刻も早い治療開始」が何よりも重要です。
①【最優先】早めの受診と抗ウイルス薬の内服
帯状疱疹の疑い(体の片側にピリピリした痛みや発疹)が出たら、一刻も早くクリニックを受診し、抗ウイルス薬の内服を開始すること。これが重症化を抑制する最大の鍵です。
ウイルスの増殖を早期に抑え込むことで、神経へのダメージを最小限に食い止め、帯状疱疹後神経痛への移行リスクを下げることができます。
② 早期の「神経ブロック」が予後を変える
最新の研究では、飲み薬に加えて、痛みが強い段階で早期に神経ブロック(特に選択的神経根ブロック)を行うことの有効性が示されています。
発症から14日以内に適切な神経ブロックを行うことで、帯状疱疹後神経痛への移行率を大幅に低下させ、治癒までの期間を有意に短縮できることが明らかになっています。
③ 難治性の痛みには「パルス高周波療法」
もし、一般的な治療で痛みが改善しない帯状疱疹後神経痛に移行してしまった場合でも、最新の治療選択肢があります。それが「パルス高周波療法」です。
神経の近くに特殊な針を刺し、高周波の電気刺激を与えることで、神経を焼き切ることなく過剰な興奮を抑え、痛みを遮断します。
当院では、相模原市内でも実施している施設が極めて少ない、この希少な「パルス高周波療法」を行っています。
4. 50歳を過ぎたら「ワクチン」という選択
そもそも帯状疱疹にならない、あるいは重症化させないために、現在は50歳以上を対象としたワクチン接種が推奨されています。予防接種は、帯状疱疹後神経痛の発症リスクを大幅に下げる最も有効な手段の一つです。
5. 結論:帯状疱疹は「後遺症」を未然に防ぐ病気
帯状疱疹は、単なる「痛い発疹」ではありません。その後に続くかもしれない長い苦痛——帯状疱疹後神経痛こそが、この病気の真の脅威です。
「たかが皮膚の湿疹」と放置せず、違和感を覚えたらすぐにクリニックを受診し、抗ウイルス薬による加療を始めてください。そして、強い痛みが残る場合は、神経ブロックやパルス高周波療法といった専門治療を検討しましょう。正しい知識と素早い行動が、あなたの未来の生活を守ります。
- ・The efficacy of selective nerve root block for the long-term outcome of postherpetic neuralgia.
(帯状疱疹発症後14日以内に選択的神経根ブロックを行うと、帯状疱疹後神経痛の発症率が低下し、治癒までの期間も有意に短縮されることを示した研究) - ・Efficacy and Safety of Pulsed Radiofrequency Combined with Platelet-Rich Plasma in the Treatment of Postherpetic Neuralgia: A Systematic Review and Meta-Analysis.
(保存的治療に抵抗性の帯状疱疹後神経痛患者49例を対象に、後根神経節近傍へのパルス高周波治療が合併症なく中期的(12週間)に有意な疼痛軽減をもたらすことを示した臨床研究)